歴史を科学するとこのような本になるのか。
久しぶりに素晴らしい本を読ませていただいた。上下に分かれている厚い本だが、最後まで興味が途切れませんでした。
本のタイトルは、アステカやインカがなぜスペインの少数の軍隊に征服されたという理由なんです。
鉄でつくった剣や盾を持っていること、銃があったことが、たくさんのインディオを殺すことができた理由なんです。実は最初の接触で天然痘などの病気で人口のうち大半が死んでしまって、国力が弱くなっていたのも理由だそうです。それだけでなく、他の国が征服されていった大きな理由は、病原菌のせいだというのです。
小さい頃から次のような疑問を持っていたのですが、この本を読んで解消されました。
「なぜ、人は社会性を帯びているのだろうか?なぜリーダーが現れるのだろうか?」
私は自由人のように、ふらふらと群れずに生きるのが好きでした。友達関係は面倒で、人に頼るのも頼られるのも嫌い。そして、集団にいると必ずリーダーと言われる人が出てきて、みんなを引き連れます。リーダーをトップに序列ができるのも嫌でした。
ところが、人が集まって住むためには、組織としての統率が必要なようです。
人が集まれば、食べ物の取り分や縄張りの点でトラブルが起き、最後は殺し合いに進むことがありますことが、著者がパプアニューギニアでの体験で書かれていました。殺されれば、恨みとなり復讐する。そしてまた復讐、、と連続して血族社会や部族社会が小さくなったり、なくなったりすることもあるそうです。
組織の人数により、その構成する形態は以下のように変わるようである。
- 小規模血縁集団(バンド)
- 数家族
- 数十人
- 親族のみ
- 争いごとは話し合いで決める
- 狩猟・採集
- 移動
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部族社会(トライブ)
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数百人
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顔はわかる
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リーダーがいるが、生産活動に関わる
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狩猟・採集から栽培
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定住
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首長社会(チーフダム)
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数千人
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直接生産活動をしないリーダーがいる
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リーダーが法を決め、争いごとを解決する
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国家社会(ステート)
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世襲制のリーダー
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リーダーは直接生産活動をしない
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富と権力を集める
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数万人
人数がある程度大きくなると、お互いに顔見知りというわけではないので、仲裁に入るようなリーダーが必要となるようである。
小さい組織では年長か力の強いものがリーダーになるだろうが、顔見知りでない場合は役割として必要なようである。やがて、宗教で統率したり、法律を作って統率をする。
その組織のサイズを決定するのは、定住であるかどうか、米や麦などの栽培により人口の集積化が可能になった。国家社会になって、直接生産労働にたずさわなくてもよい人が増えたので、発明・発見があり発展していった。結局、組織としての統率が取れて大きな国になっていった方が、武力が増えて、周りの部族や国を征服していった。
これって、Age of Empire というゲームと似ていますね。
ネタバレしそうなのでこれぐらいにしておきますが、他にも人類が地球を広がっていく様子や、人類はアフリカの大地溝帯で生まれたものの、アフリカを中心に発展していかなかったのか?なんていう、科学的な疑問と興味が次々と出てきます。
歴史を科学するなんて、こんな楽しいことを学びたかったな。