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[本]乳房に蚊

乳房に蚊Amazonで購入書評この本の背表紙は、白地に豊満な乳房が大きく描かれている。 乳房にはピンク色の乳首と停まった蚊が一匹。 なんとも不思議な絵柄だが、通勤の電車の中で本を広げながら読むのは少し恥ずかしい。 でも私はいい年なので、いまさら恥ずかしがること自体が恥ずかしい。周りを気にしないことにした。 しかし、この「乳房に蚊」という題名はなんだろう? 題から本の内容が全く想像できない。 帯には「結婚とは、永遠に続く倦怠期。」とある。そうか、倦怠期を迎えた妻の乳房か。 それにしては、ピンク色とは若くて初々しい。それに蚊の組み合わせ。 その不可思議な煙に巻かれながら、その謎を明かすべく読み始めた。 読み始めてみると、止まらない。文体が軽くノリが良いので、どんどん先に進めてしまう。 もう1ページ読もうと思っていたら、駅で電車を降りるのを忘れてしまった。 中断するのが難しく、一気に読んでしまった。 小説の主人公は、かつては輝いていたがいまは売れない脚本家。 その売れないときの仕事と生活の一瞬を切り取った物語。 作者の私小説に、作者のみが感じるような心理描写があり、テレビのドラマを見ているようだ。 日常の何気ない生活の中に、普通の人々が感じる不満とやるせなさと期待と苛立ちに共感する ああ、いつか見た風景。こんな感じを抱いていたな。 そして、また同じようなことを言うのかも。 安心した生活にも、ちょとしたハプニングやイベントが生じ、また変わらない日々を過ごす。 まるでテレビの2時間ドラマを見ていたようだった。

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